パニック症・パニック障害とは?
パニック症の主な症状
定型的なパニック障害は、突然生じるパニック(パニック発作と言う)によってはじまる。
その次には「またあの発作が再発するのではないか?」と怖がる「予期不安」と慢性化である。
長期化するにつれ、発作が起きた時に逃れられない場面を回避しようとする。
その為、生活範囲を限定する「広場恐怖症」が生じる。
パニック発作とは?
パニック障害の人は、突然、動悸などの自律神経症状と強い不安感に襲われ恐怖に陥る。
自律神経症状として、「めまい」「動悸」「手足のしびれ」「吐き気」「息苦しさ」などの症状がある。
不安感と言っても自分でもよく分からない漠然とした不安と、意味もなく「死ぬのではないか?」「気が狂うのではないか?」などの恐怖感がある。
患者は、これらの症状が出ると激しく困惑し受診をすることがあるが、これらの症状には、特別な処置がなく1時間以内に回復する。
これが「パニック発作」である。
無意識身体拒絶反応
突然体が思う通りに動けない状態になることがある。
これは「イップス」という。
予期不安とは?
患者は、パニック発作に激しい恐怖を感じる。
このため、発作が起きるのではないかと、常に不安を募らせていく。
これを「予期不安」と呼ぶ。
やがて、神経質になり、いつも自分の身体の状態を観察するようになる。
そして、持続的に自律神経症状が起き、パニック発作が繰り返し生じるようになっていく。
広場恐怖とは?
パニック発作が起きた場合に「その場から逃れられない」という状況を避けるようになる。
回避される状況として、電車や飛行機、歯科、理・美容室、レジを待っている時、道路の渋滞など、一定時間特定の場所に拘束されてしまう環境に恐怖感を感じる。
さらに不安が強まると、家にこもりがちになり一人で外出できなくなることもある。
このような症状を「広場恐怖(アゴラフォビア)」という。
広場恐怖の進展とともに、生活の障害は強まり、社会的役割を果たせなくなっていく。
そして、この社会的機能障害や周囲との葛藤が余計にストレスとなり、症状の慢性化が進む。
二次的うつの始まり
予期不安や広場恐怖により社会的から隔絶された状態が続くと自信喪失などによってうつ状態となることもある。
初期の頃にははうつの症状が見られなかった者でも、パニック発作が繰り返す事で不安が慢性化し、うつ状態を併発するケースも多い。
但し、これはパニック発作が二次的に発症した疾病であり、パニック障害そのものの症状とは分けて考える必要がある。
パニック症の診断
「予期しないパニック」が繰り返し発生し、不安が1か月以上続くならパニック障害の可能性が疑われる。
突然のパニック発作→予期不安→症状が持続→広場恐怖 という経過の確認されている。
パニック障害は、広場恐怖を伴う慢性化したものと、広場恐怖を伴わない軽症例の2つに区分される。
なお、PTSD・うつ病・強迫性障害などの精神疾患の症状の一つとしてパニック発作を併発する場合もある。
この場合は、これらの病気の症状の一つとして扱われパニック症とは言わない。
疫学
パニック障害は、男女ともに起きる疾患だが、女性の罹患率が2倍程度といわれる。
その原因について従来は、心理的「原因」よりも、症状に対する患者の意識が症状進展と重視されるようになった。
パニック障害の重症度は様々であり、軽度の患者もいれば重度の患者もいる。
重症例では、適切な治療を受けないまま経過すると、数年間にわたって外出できないなど、日常生活や社会生活に大きく支障をきたす場合もある。
特にパニック障害という病名がまだ広まっていなかった時代に初発した者は、広場恐怖の程度が重く、長期化する例を見ることが多い。
なお、パニック障害にうつ病が併発する場合が少なくはなく、日本では約3割、欧米では約5〜6割といった統計も出されている。
パニック症の治療
治療的には、薬物療法と精神療法があり、様々な治療が有効性を認められている。
精神療法において、最も基礎的で重要なものが「疾患に対する医師の説明」「心理教育」である。
パニック障害は、発作の不可解さと、発作に対する不安感によって悪化していく疾患であり、医師が明確に症状について説明し、心理教育を行うことがすべての治療の基礎となる。
よく行われている認知行動療法では、「恐れている状況への暴露」「身体感覚についての解釈の再構築」「呼吸法」などの訓練・練習が行われ、不安に振り回されず、不安から逃れず、不安に立ち向かう練習を行う。
系統的な認知行動療法を行う施設は現在では日本には多くはないが、臨床医は、認知行動療法的な患者指導を行っている場合が多い。
その他、EMDR、森田療法、内観療法による介入も有効とされている。
暴露反応妨害法(暴露療法)
不安が誘発される状況に想像的または体験的に身を置き、回避しないことで徐々に慣れる
呼吸法
過呼吸にならないようなリラクゼーショントレーニング
筋弛緩法
筋肉を緩めるリラクゼーショントレーニング
自分で出来る認知行動療法
パニック障害であると精神科医に診断され、投薬を受けていても、その医師の専門とする分野がパニック障害ではなく、十分な認知行動療法的な指導を受けられない場合もある。
このような場合に、参考となる考え方は以下の通り。
◆ まずこれまでの症状の流れを再確認して、本稿の最初の症状の部分と一致することを確認する。
◆ 初期発作の後、「また発作が起こるのではないか」という予期不安が生じ、身体の状態を観察する姿勢が持続し、予期不安と自己観察によって症状が生じてきていることを確認する。
◆ この症状がパニック障害であり、死や、発狂に至るものではないことを、理屈の上では、納得する。
◆ 出来ない場合には、医師に再度相談する。
◆ 症状の流れを振り返り、「恐ろしい症状が起きないように」生活しようとして、不安から逃れる姿勢を取ることが自己暗示の悪循環を作っていることを理解する。
◆ 不安から逃れるための回避行動、日常生活の制限は、うつ病を発症させる可能性があるので、ただちにやめることが必要である。
◆ 日常の行動から「不安に左右されず」「不安は不安のまま置いておき」「不安を無視をして、生活をする」ことを心がける。
◆ 焦りなどから無茶をして発作を起こしてしまうケースも多いので、その場合は医師と相談したり焦らずにすることが大切である。
家族や周囲の理解
広場恐怖などの重篤な症状があるが一見、健康体なので、「気の持ちよう」「怠けているだけ」と捉えられがちだ。
しかし、治療にはある程度の長期間を要するなど社会的なサポートも必要なため、家族や恋人、職場などといった周囲の理解を得ることも重要な要素である。
しかし、過度の保護は本人の症状を正当化し治癒から遠ざけてしまうこともあるため、まわりの者も患者と共に医師との対話が重要である。
注意すべき点
パニック障害という概念の歴史が浅いこともあり、精神科もしくは心療内科以外の診療科では診断が困難となる場合がある。
また、患者側も別の診療科を回ってしまう場合もある。
これらの条件のため、長期間適切な診断がなされない場合のあることを念頭に置いておく必要がある。
このため、パニック障害の疑いがあると思うときには、精神科・神経科・心療内科を受診する必要がある。